今週の一枚 WANIMA 『JUICE UP!!』

今週の一枚 WANIMA 『JUICE UP!!』

WANIMA
『JUICE UP!!』
2016年8月1日(水)発売

2016年8月3日(水)にリリースされるWANIMAの最新シングルで、タイトルは「燃料補給をする」とか「活気づく」とか、転じて口語で「呑む」といった意味。KENTA(Vo・B)はアルコールが苦手だそうだが、それでも実にWANIMAらしい景気の良いタイトルである。ニベア花王『8×4 ボディフレッシュ』のCMソング“ともに”や、音源化が待たれていた“切手のないおくりもの”名演カバー(中古車情報「カーセンサー」CMソング)などを収録し、これまで以上にポップな攻め気と浸透力を感じさせる1枚だ。

“ともに”のミュージックビデオ(Full ver.)はこちら。

リード曲は、先頃テレビ朝日系『ミュージックステーション』出演時にも披露された“ともに”。僕はこの7月に「京都大作戦2016」や「FUJI ROCK FESTIVAL ‘16」でもそのパフォーマンスに触れたのだが、WANIMAナンバーとして新鮮な手応えがあった。いや、ぶっちぎりのグッドメロディだしパンキッシュだし、終盤追い込みを掛けるように賑々しいコーラスが周到にデザインされている点などは相変わらずのWANIMA節なのだが、何かが違っている。そのことを考えていた。

《どれだけ過去が辛くて暗くても 昨日よりも不安な明日が増えても/悩んだり泣いたりする今日も 進め君らしく 心踊る方》

力強いフックから歌い出される歌詞は、人々のタフな日々に寄り添うために、ありったけの言葉を注ぎながら駆け抜けてゆく。最初のヴァースに綴られた情景は《別れ道に立つ ともに唄う》である。君らしく進むべき心踊る方向は、もしかしたら自分とは違う方向かも知れないのだ。KENTAの歌は、「心踊る方はこっちだ」という決めつけをしないし、すべての人のそれぞれの道を肯定している。

WANIMAはこの“ともに”という曲で、ポップソングの最も難しいテーマに挑んでいる。精一杯のメッセージを振り絞った上で、人それぞれの生き方を否定しない、ということだ。我々は何かを主張するとき、他者の意見や行動を否定しがちだけれど、“ともに”という曲は違う。同じ方向に進むことは出来なくても、この歌といつでもともにいてくれ。ライブに来れないときも、この歌を聴いてくれ、歌ってくれ、という思いが込められているのである。ポップソングのレコード作品として、圧倒的に正しい。

情熱的なラテンミクスチャーがますます情報量豊かになったワンチャン狙いの一曲“オドルヨル”や、この上なく優しいメロディと《優しい歌はいらない》という歌詞の相乗効果で心の琴線を揺らす“For you”も素晴らしいが、それこそパンクバンドのまま“切手のないおくりもの”級の普遍的なポップソングを生み出し、すべての人のためにポップソングの真の力を引き出そうとするWANIMAの凄味が伝わるシングルだ。今後の夏フェス行脚や、9月からの全国ツアーも楽しみ。(小池宏和)
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