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人にはいろんな顔がある。仕事の時、家族といる時、友達やパートナーといる時――どの顔もあなたを作る大切な要素で、それはHump Backだって同じ。2曲収録の4thシングル『tour/Linger』には、Hump Backのふたつの顔が収められている。日本中をライブで転々とし、機材車で揺られながら描く未来を、高揚感のあるメロディにのせ《僕らの夢が隠せずにいるのさ》と歌う“tour”で見えるのは、「バンドとしてのHump Back」の欲望。そして“Linger”では、《マスカラ落としてからやっと泣く》とステージでは見せない複雑な感情を、疾走感のあるサウンドにのせる。そこにいるのは「いち女性としてのHump Back」だ。光と闇だけではない、辛いと甘いだけでもない。その顔はドラマのようにわかりやすくはないが、どちらの曲も苦悩や矛盾を等身大のまま超速球でぶつけてくるところに、どこまでも透明度の高いHump Backらしさを感じる。愛おしいほどの人間味。彼女たちの醍醐味が詰まった一枚だ。(前田侑希)
(『ROCKIN'ON JAPAN』2023年8月号より抜粋)
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