『スピリット』発表に伴うワールド・ツアーの最後、2018年7月のドイツ公演を収めたもの。映像版を含むボックス・セットが『スピリッツ・イン・ザ・フォレスト』と題されている通り、ベルリンの森(フォレスト)にある巨大な円形劇場でのライブであり、そのうちのCD版が『ライヴ・スピリッツ―サウンドトラック』である。
映像に関しては、アントン・コービン監督によるドキュメンタリーも収録されている。住む国も歩んだ人生も異なる6人のファンが、それぞれの思いを抱えライブに訪れるまでを追った内容だ。アンコールで演奏される“パーソナル・ジーザス”は、誰でも自分にとっての神様を持っていることを歌った曲だが、6人にとってデペッシュ・モードはそういう存在である。
一方、パフォーマンスの純粋な記録である『ライヴ・スピリッツ』に触れると、人気の大きさと根強さをあらためて感じる。“エヴリシング・カウンツ”をはじめ、大合唱になる場面が何度も繰り返され会場の熱気が伝わってくる。このユニットを“パーソナル・ジーザス”とする人々が大勢いるのだ。
デペッシュ・モードは、80年代のエレ・ポップ流行を代表する存在だが、長い活動期間で音楽性の幅を広げてきた。デビュー作から最新の『スピリット』まで各年代の代表曲を選んだこのステージも、わりとロック的なサウンドであったりする。特定のフォーマットに固執するのではなく、中音域に艶のあるデイヴ・ガーンのボーカルを活かし、親しみやすいメロディを聴かせること。それに注力してきた結果が、この熱狂的支持だ。
公演地にちなみ、故デヴィッド・ボウイがベルリンの壁を題材にした“ヒーローズ”のカバーをやや厳粛なアレンジで披露するのも印象深い。 (遠藤利明)
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