13年ぶりのニュー・アルバムは、スクリーンとスピーカーにリチウム電池まで仕込んだ、度肝を抜く初回限定特別仕様パッケージで出荷されるやいなや、約25万セットをたちまち売り切り、テイラー・スウィフトを引きずり下ろして全米初登場1位に輝いた。これは、2019年の音楽シーンにおけるハイライトのひとつと言っていい。また先日、本作収録曲がグラミー賞2部門にノミネートされている。
ここ日本でも25万セットのうち一部が流通したものの、アッという間に市場から姿を消し、配信だけでは満足できぬ/CDで欲しいけど手に入れられないリスナーも相当数いたようだが、ようやく通常盤がリリースされることになった。今回は、帯と歌詞対訳の付く国内盤も発売。だが、これまた通常のケースに収まる様子など微塵も見せず、未公開アートワークを含んだ56 ページのブックレットや3Dレンチキュラー・カード5枚を封入した限定仕様に再びなるという。初回盤の動画プレーヤーで観られた映像をダウンロードできるコードもあるそうで、すでに最初のやつを入手できた人でも気になってしまうだろう。
音の内容については今さらだが、CDの7曲中6曲が10分超えの長尺曲(※配信版はセグエが3トラック追加)となり、各楽器がせめぎ合って生み出す強烈な変拍子と、美しいボーカルから溢れる叙情性が交錯する音像に魅せられた。最終曲のイントロで確認できるキング・クリムゾンの影響などプログレ色を強める一方、メタル的なカタルシスは抑制され、サイケデリックでエクスペリメンタルな新次元に到達していると思う。
ここまで聴く者を選びそうな音楽が巨大な成功を得ているという事実に、なんだかとっても勇気付けられる。あらためて彼らに敬意を表したい。(鈴木喜之)
詳細はSony Music Entertainmentの公式サイトよりご確認ください。
ディスク・レビューは現在発売中の『ロッキング・オン』1月号に掲載中です。
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