「今から30年前、あの頃ロックは……」――1994年、ロックに何が起こっていたのか対談:粉川しの × 高見展

rockin'on 2月号 中面

現在発売中のロッキング・オン2月号では、毎年恒例の新春しみじみ企画「今から30年前、あの頃ロックは……」を掲載。

今から30年前の1994年、ロックに何が起こっていたのか? 粉川しの(音楽ライター/当時19歳・大学1年生)と、高見展(音楽ライター/当時33歳)が語り合った対談を、冒頭部よりご紹介。


粉川しの(以下、粉)「とにかく94年はすごかったんですよ」

高見展(以下、高)「ねえ」

「カオスだったんです。『何が盛り上がっていた』っていうよりも、USもUKもすごくて、ロックもすごくて、ヒップホップもすごくて、ポップもすごくて、全体的に盛り上がっていたっていう年ですよね」

「この年はすごかったと思う」

「歴史的にはブリットポップのはじまりなんですけど。カサビアンのサージにいつかのインタビューで『ブリットポップとか好きですか? 今バカにされてますよね』って話したら、『いや、俺はブリットポップ大好きだ』と。それはなぜかというと、『ブリットポップはオアシスとブラーとパルプだけではない』と。そこには、ポーティスヘッドもマッシヴ・アタックも、アンダーワールドもプロディジーもいたんだぜって。そういったものをひっくるめて俺はブリットポップって呼んでいるし、当時の自分が、レスターの片田舎で、ロンドンのシーンを指くわえて見てたときの憧れはそこにあるって言っていて。わかる!っていう(笑)。私も大学で、オアシス! ブラー!ってみんながキャーキャー騒いでいる横で、ロックとかダメ! アンダーワールド聴いた? エイフェックス・ツインとか聴かなきゃ、って言っている先輩がいるっていう状況で。クラブシーンも盛り上がっているし、ロックシーンも盛り上がっているし。それこそ、ジャミロクワイも“スペース・カウボーイ”で、アシッドジャズでいきなりオーバーグラウンドに出てきて。あとポップでは、カイリー・ミノーグの『カイリー・ミノーグ』がめちゃくちゃヒットして。楽しかったなあ、みたいな。ブリットポップの年だけど、ブリットポップだけじゃないし。そもそもブリットポップっていうのは、『ブリットポップ』だけではないことが示された年なんですよ。あと、みんな忘れてるけど、この年はザ・ストーン・ローゼスの『セカンド・カミング』も出ているんですよ(笑)」

「あ、この年か!」

「『セカンド・カミング』で、ああマッドチェスター終わった……って」

「いいアルバムだったと思うけどね。訴求力はなくなっていた」

「で、ライドは『カーニバル・オブ・ライト』っていうビートルズみたいなアルバム出すんです(笑)。で、シューゲイザーも終わった……って。90年代前半のUKの感じが終わったと思った。アシッドハウスがあって、シューゲがあって、マッドチェスターがあって、音楽的には革新的な時代でしたけど、それがブリットポップでバツン!って切れちゃうんです。革新性から、『クールブリタニア、イエーイ』ってなっちゃって、ビートルズ再評価ってなったせいで、かつてあった革新性の種が水に浸かっちゃった。結果、90年代後半には何も残っていないという。それはブリットポップの功罪の『罪』ですよ」

(以下、本誌記事へ続く)



1994年を振り返った対談は、現在発売中の『ロッキング・オン』2月号に掲載中です。ご購入はお近くの書店または以下のリンク先より。

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